「IBM奇跡の”ワトソン”プロジェクト」

「IBM奇跡の”ワトソン”プロジェクト」スティ―ヴン・ベイカー著 土屋政雄訳 金山博・武田浩一解説 を読みました。ワトソンプロジェクト発足から、2011年2月16日にクイズ番組「ジョパティ」でブラッド・ラターおよびジェニングズと対戦し、勝利するまでのワトソンの成長が読みやすくまとめられています。

人口知能の分野では理想主義と実用主義的な立場で研究が行われているようで、実用主義のワトソンは理想主義者からは厳しいコメントをいただいているようである。例えばワトソンは所詮統計分析マシンで理論を作れない。ワトソンは低能すぎ、無知すぎ、有名すぎ、金満すぎる。ただ、実用的な観点からワトソンは「ジョパティ」で強いと言う能力があります。

私には検索エンジンとワトソンの差異がよくわからなかったのですが、本書を読んでよく理解できました。具体的な答えを求める単純な質問(日本で一番高い山は)に対しては両者には大差はないのですが、このような質問は「ジョパティ」では30%程度出題されるだけで、残りはもっと骨のある質問のようです。このような質問に対して答えの信頼度を的確に示すのがワトソンのようです。検索エンジンでは統計的に最も見込みのあるウェブページにユーザーを案内し、答え探しはユーザーに任せることになります。

「ジョパティ」専用マシンとして開発されたワトソンですが、今後の理想的な展開としては、人間の代わりに文書を読み、理解し、何が書かれているかを教えてくれ、内容に関して人間からの質問に対して回答してくれることだと思います。近い将来の利用分野はコールセンターが有望視されているようです。また、製薬研究所の頭の良い研究助手、法律事務所が理想の職場と言うアイデアもあるようです。いろいろな産業に溶け込んでいければ大成功だと思います。